Soaring:Fantastic Flight
2019年7月23日、我らが実家、東京ディズニーシーに「ソアリン:ファンタスティック・フライト」がオープンした。
海外でも大きな人気を誇るソアリンが東京ディズニーシーに来るという情報が耳に入ったとき、僕のような海外ディズニーに行ったことのないディズニーオタクは
「あのソアリンが日本に来るのか」
という期待とともに、
「持ってくるの10年くらい遅くない?」
という複雑な気持ちになったと思う。
僕の友達(非Dオタ)も「なんかパッとしないよね」と言っていた。
ソアリンにはタワー・オブ・テラーやレイジングスピリッツのような絶叫マシン要素がなく、トイ・ストーリー・マニア!のようなディズニー要素もない。
さらに、2020年にランド、2022年にシーでオープンされる大規模な新エリアに比べるとインパクトも薄い。
もっと言えば日本には同じ形式のアトラクションである『富士飛行社』が富士急ハイランドにある。僕は乗ったことないけど
そんなわけでソアリンはオープンする前、なんか今更感あるなとおそらく誰もが思っていた。
しかし、いざオープンすると、待ち時間はとんでもない長さになった。
オープン初日の待ち時間は、15分早く入園できるハッピーエントリーのみで240分、その日の最長待ち時間は350分であった。
記事執筆時(2019年10月17日木曜日)でも、待ち時間は最長で150分を超え、比較的待ち時間が短くなる13時でも120分程度である。平日にもかかわらずだ。
口コミでも「泣いた」「最高」「2時間並んだ価値があった」などと大絶賛だ。
ディズニーでも絶叫マシンでもないのに、である。
さて、ここで僕個人の話になるが、僕は並ぶことが大嫌いである。
開園待ちは座れるし、朝の待ち時間短縮につながるのでまだいいが、立った状態で少しずつ進みながら待つというのは苦痛でしかなく、30分前後ならまだしも、1時間待ちなんて考えられないし、ミッキーの誕生日みたいな記念日ならまだしも何でもない日に2時間以上待つ人間はマッドハッターなみにイカれてるとすら思っている。
ディズニーリゾートが好きな人の多くは並ぶのが好きな人ではなく極力並ばない方法を知ってる人であり、長時間並んでいる人は素人かめったに行けない人か完全にイカレたオタクだけだというのは常日頃から言っている。ブログの初記事でこんなこと言うのはどうかと思うが。
中でも僕が理解できないのはトイ・ストーリー・マニア!の待ち時間である。
別にトイ・ストーリー・マニア!が嫌いというわけではないが、トイ・ストーリー関連のシューティングゲームはアストロブラスターが既にランドにあり、シーにはトイ・ストーリー・マニア!以外にもタワー・オブ・テラー、センター・オブ・ジ・アース、インディ・ジョーンズ・アドベンチャーのような良質なアトラクションがたくさんあるというのにどうしてトイ・ストーリー・マニア!が一番混むのか今でもわからない。
トイ・ストーリー・マニア!マニアの方には怒られるかもしれないが、画面に向かってシュコシュコ打つだけならWiiでもできるじゃん!と思ってる。
てか調べたらWiiなどでゲームとして出てた。僕は間違ってなかった
念のため言っておくが、僕はトイ・ストーリー・マニア!アンチではなく「いくらなんでも待ち時間長すぎ」というだけであり、トイ・ストーリー・マニア!をこき下ろしたいわけではない。むしろ楽しいし乗ったことないなら是非乗って欲しいと思ってる。
ソアリンに話を戻す。
そういうわけで、ソアリンに乗る前の僕はソアリンを楽しみにしつつも「2時間並ぶ価値があるなんて大げさでしょ」「オタクの言う『泣いた』ほど信用できないものはない」などと考えていた。
だがソアリンに乗った僕の意見はこうである。
ソアリン最高。
いや、マジ最高なんすよ。2時間並ぶ価値ある。2時間なら並ぶ。90分だったら短すぎだぜヒャッホウって言っちゃう。ディズニーオタクやってて2時間並んでもいいなんて初めて思った。ホントにソアリンは最高。
ここまでで1700文字近く使ってしまいましたが、ソアリンによって完全にイカレたオタクの一員にされてしまった僕がソアリンの素晴らしさについて出来る限り書きます。
ソアリンとは?
そもそもソアリンってなんだよという人のためにソアリンについて解説します。
ホントに知らない人はここまで記事を読まないだろうし、Wikipediaでも見ろと言いたいところですが、自分の頭の整理もかねて簡単にまとめておきます。
ソアリンは、元々は航空産業の盛んなカリフォルニアで、その産業に敬意を払って2001年に生み出されたアトラクションである。
当時は「ソアリン:オーバー・カリフォルニア」という名前であり、その名の通りカリフォルニア州を飛び回るアトラクションであったが、後述の上海ディズニーランドでのオープンと同時に世界中を飛び回る内容に変わり、「ソアリン:アラウンド・ザ・ワールド」に名前を改めた。BGS(バックグラウンドストーリー)は特になし。ソアリンの英語表記はSoarin'である。
フロリダのエプコットにもあるが経歴はだいたいカリフォルニアと一緒なので割愛。
上海では、「ソアリン:オーバー・ザ・ホライズン」という名前で2016年に上海ディズニーランドの開園と同時にオープンされた。内容は「ソアリン:アラウンド・ザ・ワールド」とほとんど同じだが、BGSは魔術師の魔術によって空を飛ぶというものになっている(らしい)。ソアリンの英語表記はSoaringである。
本題である東京ディズニーシーの「ソアリン:ファンタスティック・フライト」はこれまた内容は「ソアリン:アラウンド・ザ・ワールド」とほとんど同じであるが、BGSはオリジナルのものに変更されている。BGSの内容については後述する。ソアリンの英語表記は上海と同じSoaringである。
ソアリン:ファンタスティック・フライトのBGS
1901年のメディテレーニアンハーバーを見下ろす丘の上。
そこには、空を飛ぶという古くからの人類の夢をたたえる博物館『ファンタスティック・フライト・ミュージアム』がある。
今、この博物館では、幼少期から空を飛ぶことを夢見続け、空を飛ぶための研究に情熱を注ぎ、ファンタスティック・フライト・ミュージアムの二代目館長を務め、女性で初めて探検家・冒険家学会(S.E.A.)の会員となったカメリア・ファルコの生誕100周年を記念した特別展が開催中。
ゲスト達はファンタスティック・フライト・ミュージアムの常設展を見た後にその特別展を見学し、最後は博物展のテラスでカメリアが仲間とともに開発した乗り物、ドリームフライヤーへ......
以下、ソアリン:ファンタスティック・フライトのQラインのネタバレとなります。未体験の方はネタバレであることを理解した上で読み進めてください。
ソアリンのQライン(待ち列)について
写真が少なくて申し訳ないです。ディズニーシーのソアリン公式ページから引用した画像を使っています。撮ってきたらまた編集するかもしれません。
ロビーの展示および常設展の絵画の写真をフォロワーの米みそさん(@m_komemiso987)からいただきました。ありがとうございます。
スタンバイ・エントランスをくぐったら、まずは中庭に進みます。
中庭
ここには博物館の創設者でありカメリアの父でもあるチェッリーノ・ファルコの名前が彫られた石や、アレッタの石像があります。
階段を降りると、羽ばたき飛行機を考案したレオナルド・ダ・ヴィンチのように空を飛ぶことへ貢献した人たちの壁画があります。
ロビー
博物館に入ると、ロビーがあります。
ここにはオープンセレモニーで使われたリボンとハサミや、その様子を描いた絵画など、博物館に関わる展示があります。
ここまででも僕のようなオタクの心はくすぐられっぱなしなのですが、ソアリンの本気はここからです。
常設展
ロビーを抜けると、ドーム状の部屋に入ります。
イメージとしてはホーンテッドマンションの伸びる部屋です。いや目の錯覚かも。
この部屋こそ、ファンタスティック・フライト・ミュージアムの常設展です。
この部屋はやばい。
もうこれ博物館じゃん。いや博物館って言ってたけどさ。
これがアトラクションのQラインなの?
マジ?
ここの展示みんなこのために作ったの?
これと全く同じ展示を普通に博物館でやれるんじゃね?
これは歴史あるものですって言われても信じちゃうぜ?
とオタクのテンションはMAXになり、カメラを構えて写真を撮り始めるも、
「このエリア全体的に良すぎてどこ撮ればいいかわかんねぇ!」
と思ったので写真を撮ることを諦めカメラをしまい、ひたすらほおーへえーとアホ面して眺めてました。
いや素晴らしすぎでしょここ。
一応ここもQラインなのですが、結構短いのですぐ終わってしまいます。
あと30分待ち時間伸びてもいいからここをもう少しじっくり見させてくれ!!
という気分になります。まあ実際はすぐ次の部屋に向かっちゃうんですけど
この部屋を出るところでキャストによる人数確認が行われ、次はいよいよ特別展のギャラリーになります。タワー・オブ・テラーの書斎とだいたい同じ感じです。
特別展
常設展を抜けると、カメリア・ファルコの生誕100周年を祝う特別展のギャラリーとなります。
この部屋はやばい。(2回目)
空を飛ぶための研究記録や、S.E.A.の会員に認められたときの記念メダルなど、カメリアに関する様々な展示がありますが、
すぐにプレショーが行われるため、この部屋の展示を見る時間をほとんど与えられぬまま次の部屋に向かってしまいます。
なんともったいない。
常設展と同じくらい手が込んでるこの展示を満足に見ることなく次に行かねばならないとは。
まあこの部屋を出るのが最後になると肝心のドリームフライヤー乗車時に後ろの方の席になってしまい、居座りすぎると次のグループが入れなくなって回転率に影響するので惜しい気持ちはわかりますがプレショーが終わったらすぐに次に行きましょう。
(追記:次の部屋に入れる人数より特別展に入っている人数の方が多いという状況になると、特別展に取り残されることがあるようです。キャストさんたちがソアリンの運営に慣れてきたり人気が落ち着いたりしたらそういうことはなくなるかもしれませんね。)
プレショー
この部屋のプレショーでは、カメリアの肖像画がホグワーツの絵のように動き出し、自分の人生のことやドリームフライヤーのことなどを語ります。
以下に彼女の語った内容を。
(追記:特別展のプレショーは複数パターンあるという情報をいただきました。ありがとうございます。軽く調べてみたところ少なくとも2パターンはありそうです。ですが交互にやっているというよりは特別展に人が残ってしまった場合に同じものを流さないようにする対策という感じでした。どっちがメインかわかりませんがとりあえず僕が体験したバージョンを載せておきます。)
「あははっ、私の愛しいアレッタ。皆さんにご挨拶して。
ファンタスティック・フライト・ミュージアムにようこそ。
(アレッタに向かって)うふふっ、そうね、ここにいる皆さんは、夢を見ることが好きそうね。
私は物心がついたころから、鳥のように自由に空を飛ぶことを夢見ていました。
最初に飛ばした紙飛行機が空高く舞い上がったとき、空を飛ぶという私の夢を、多くの人と分かち合いたいと思いました。
そんな想いを胸に、私は世界中の科学者や芸術家達と協力し、空を飛ぶ様々な手段を開発したのです。
そして、空を飛びたいと願い続ければ、素晴らしい技術が生まれ、その夢は実現するのだと確信しました。
今日は私たちの自信作、ドリームフライヤーを皆さんにご紹介できて本当に嬉しく思います。
皆さんの夢を見る力が、このドリームフライヤーを空高く舞い上がらせ、時空を超えた旅へと連れて行ってくれるでしょう。
(アレッタが飛んでくる)あっ、あっ、あっははっ、アレッタ、ここにいる皆さんもあなたのように空を飛ぶのよ。
それでは、素晴らしい空の旅、ファンタスティック・フライトを楽しんできてくださいね!
Buon Viaggio(ヴォン・ヴィアッジョ)!!」
このプレショーまでのQラインがソアリン:ファンタスティック・フライトの素晴らしさを何十倍にも高めてると言っても過言ではない。
古くからそうであったように、人類は誰もが皆「空を飛びたい」と願ったと思います。それも一度や二度ではなく、何度も。
今や飛行機は交通手段として一般化し、ヘリコプターで小回りのきく自由な移動もできるようになりました。
無人でもドローンなどが登場したことで、人類は昔よりは空を意のままにできるようにはなりました。
しかし、今でも鳥のように自由に空を飛ぶという夢は簡単に叶うことではありません。
だからこそ人類は老若男女問わず夢を見るのです。
空を飛びたい、と。
ファンタスティック・フライト・ミュージアムの常設展にある壁画をよく見ると、凧に乗って飛ぶ侍や、船で飛ぼうとする人たち、象に乗って飛ぼうとする人など、到底実現できない夢物語のような絵ばかりです。
それもそのはず、ファンタスティック・フライト・ミュージアムは空を飛ぶための技術を作った人をたたえる博物館というよりは、空を飛ぶという人類の夢をたたえた博物館なのです。
実際に空を飛んだ技術という現実ではなく、あえて現実的とは言えない人々が思い描いた空を飛ぶという夢を展示することで、それを見た我々の心には、
いつか夢見た「空を飛びたい」という想いが呼び覚まされます。
そうして知らず知らず芽生えたその想いを、カメリアは見事にくみ取ります。
まずは彼女が自らの人生について語ることで、彼女の人生を追体験すると同時に、我々自身の人生を振り返ります。
「僕も子供の頃空を飛びたいと思ったなあ」というように。
その後彼女の研究人生とともに、ドリームフライヤーの紹介に入ります。ここで我々はカメリアの空に対する情熱を受け取り、ドリームフライヤーがその情熱の結晶であることを認識します。
この瞬間、ドリームフライヤーはただの乗り物から「空を飛ぶという夢が詰まった特別な乗り物」に変わります。
極めつけは、カメリアがアレッタに対して語った「ここにいる皆さんもあなたのように空を飛ぶのよ」という一言です。
これを聞いた我々は、ソアリンが映像を使ったアトラクションであることを知っているにもかかわらずこう思います。
「これから僕たちは鳥のように空を飛ぶんだ。夢が叶うんだ。」
ひっっっっっっっっじょうにディズニーランド。
プレショーをまとめると、我々を「鳥のように空を飛ぶことを夢見た僕らは、これからカメリアの想いと情熱が詰まった特別な乗り物、ドリームフライヤーに乗って自由に空を飛ぶんだ」という気分にさせることになります。
ソアリンに乗る上でこれ以上に素晴らしいシチュエーションがありますか。
こんな気分になってから乗るソアリンですよ。
素晴らしいに決まってるじゃないですか。
ソアリン:ファンタスティック・フライトの素晴らしさはQラインに詰まってます。
素晴らしいローカライズです。
ありがとう。最高のソアリンをありがとう。
愛してるぜオリエンタルランド。
だからストームライダー復刻してくれ。
とまあ書きたいことは書いたしライドシーンについては百聞は一見にしかずということで書くことはありません。乗った人にわざわざ言うことでもないし。ほとんど海外版と一緒だし
でも特別展でQラインが終わったわけではないので最後まで書きます。
テラス前の乗車待ち
なんていう場所かわからなかったけど伝わってるよね。
そこではライドアトラクションにはよくある乗車する上での注意が流れます。その注意は壁の上部にある絵が動くことで説明されます。
当然こんなところにディスプレイを置いたら世界観崩壊も甚だしいですが、この「絵が動く」というのも効果があります。
語ったように空を飛ぶというのも夢ですが、絵が動くというのも夢の一つです。それで説明することで、夢の世界に浸ったまま乗車することができます。まあこれはオタク特有の深読みだと思いますけど
テラス
ドリームフライヤーが展示されているテラス、いよいよ乗車です。
初めてこの部屋の中を見たとき、僕はUSJのCMのように感嘆の声をあげてしまいました。
美しい星が輝く夜空の中で大きな存在感を放つドリームフライヤー。
ものすごくロマンチックでした。
このテラスの夜空なのですが、カリブの海賊の乗船所のような夜空とは違います。
カリブの海賊では真っ暗な、まさに現実の夜といったような暗さですが、ソアリンの夜空は紫がかった明るい夜空です。
これもまた夢の世界で見るような夜空なのです。
そんな幻想的な場所から飛び立ち、素晴らしい空の旅をして、幻想的な場所に帰ってくる。
ソアリン:ファンタスティック・フライトは夢に始まり夢に終わる。そんな最初から最後まで完璧に作られたアトラクションなのです。
ソアリン:ファンタスティック・フライト
ここまで「ソアリン:ファンタスティック・フライトは素晴らしい」ということを書いた。伝わったか、響いたかどうかはわからないけど、ソアリンの大絶賛ぶりを見てると、僕のこの記事はともかく東京ディズニーシーはソアリンの魅力をうまく伝えられていると思う。
ソアリンは最初から東京ディズニーシーのために作ったアトラクションなのではと思ってしまうような完成度の高さに、僕は完全にやられてしまった。
並んでもいいと思わせるほど素晴らしいソアリンをありがとう。
このアトラクションが世界中の人に届いて欲しいと思います。
でも待ち時間はやっぱり短いに超したことはないしもうちょい落ち着いて欲しいかな。